勝利

19日、王者・帝京大戦。28-14で迎えた後半インジュアリータイム、自陣ゴール前での相手の攻撃を凌ぎ切って
SO岸岡智樹選手がボールをピッチの外へと蹴り出すと、2010年度の対抗戦以来、8年ぶりの帝京大戦勝利を告げる
ノーサイドの笛が響きます。

ガッツポーズで抱き合う出場メンバー、涙を流し絶叫する応援席の部員、スタンディングオーベーションで迎える観客…
かつて国立や秩父宮でよく見だ”ワセダ”の一体感。懐かしささえ感じるその空間の中、飛び切りの笑顔を見せて
いたのが、2年生NO.8丸尾崇真選手。

「本当に嬉しかったです。純粋にやってきた良かったと…それしかないです。練習も春シーズンでキツいことをたくさんして、
やったから自信もつきましたし、やったら本当に勝てるという事も分かりました。」

出場したメンバーが口を揃えて勝因にあげたのがディフェンス。特にゴールラインを背負ってからの粘りは、チームに
確かな自信を植え付けます。

「FWでしっかり止められたところ、あとBKも全員がブレイクダウンに懸けられていましたし、ターンオーバーすることも
ありました。全員がディフェンスで少し切られても、すぐ戻ってしっかりセットして…全員でディフェンス出来た結果ですね。」
(FL佐藤真吾主将)

「ゴール前とか何回もキツい時があったのですけど、そこでFWの皆で耐えて止めましたし、そこで(以前は)簡単に
行かれていたところが我慢できるようになったと思います。妥協せずに止め続けるとか、あきらめないとか…そういう
メンタル面でも成長できたと思います。」(NO.8丸尾崇真選手)

「やっぱりディフェンスじゃないですかね。最後ゴール前、何回も行かれてもFWだけでなくBKもディフェンスで前に出て
いたので…。スキルが足らない部分もありますけど、しっかり前で止められていたと思います。」
(HO宮里侑樹ゲームキャプテン)

ディフェンスで試合の流れを作り出すと、NO.8丸尾崇真選手が敵陣ゴール前で渾身のチャージ、WTB古賀由教選手が
長い距離を走って相手をインゴールで仕留めるスーパータックル…とビッグプレーを連発、気持ちのこもったプレーで
チームを勢いづけます。

「一人一人が楽しんでやっていた。キツい状況なのですけど、しっかりみんなコミュニケーションが取れていて、そういう
ところが今日は帝京さんより上回っていたのではないかと思います。」(HO宮里侑樹ゲームキャプテン)

全ての現役部員にとって初めての帝京戦勝利、ルーキーイヤーから試合に出場、帝京に苦汁を飲まされ続けた
司令塔SO岸岡智樹選手が振り返ります。

「過去2年と根本的には僕らがやっているラグビーが違うというのもあるのですけど、今(一番変わったと)感じているのは
試合に対する準備の量かなと思います。コーチ陣は変わらず…というか皆ラグビーが大好きで、試合を見て、
(対戦相手の)こいつはこうだ…と言って、選手にフィードバックをしてくれるのですけど、(今年は)選手ミーティングが
増えていることもあって、選手内でのイメージトレーニングが出来ています。」

独特の表現を使って更に続けます。

「ジャンケンで言うなら、(去年まではコーチ陣から)グーを出してくるから、パーを出せ…という事だったのですけど、
(今年は)相手がグーを出す傾向があるから、自分たちはパーを出そうと言う風に自分たちから、こういうプランでいこうと
いう声が出てきています。そこはコーチから落とされるだけじゃないというところが今までとの一番の違い。試合中でも、
自分たちで修正できるところが今年のワセダの強み…とまではいかないですけど去年、一昨年と変わったところかなと
思います。」

春の天理大戦での大敗(6月10日、14-59)。「当たり前を当たり前にする事の難しさ、それがどれだけ大事かという事を
身に染みて感じた」(SO岸岡智樹選手)とそこからチームのスタンダードを上げることに注力、春・早明戦、夏・大東文化戦で
ディフェンスにある程度手応えを感じつつも、やはり勝利という結果を持って得る自信は全くの別物。

「今一番強いと言われているチーム…自分たちが覇権を取るために絶対に倒さなければいけない相手、それが帝京大学
だと思います。去年とか、僕が1年生の時もスクラムトライを取ったりとか、手応えを感じているのですけど、勝ちという結果を
得ることはできませんでした。そこに勝ちという景色を一回見られたという事で、次の試合は最初から『あ、帝京か』と…
それくらい言えるモチベーションに繋がる勝利を手に入れられたかなと思います。」(SO岸岡智樹選手)

8年ぶりに見た対帝京勝利という景色、それでもワセダが見たいのは更なる絶景…リーダーは先を見据えます。

「一歩一歩上がっているとは感じているので、ここで勝ったからといって緩めることはなく、(次の)東海さんもすごいタテに
強い外国人選手が2人いますし、ワセダは外国人選手に苦手な面があるので、そこをしっかり止めて、ディフェンスラインを
切らずに戦いたいです。」(FL佐藤真吾主将)

取り戻したワセダのプライド、10年ぶりの”荒ぶる”に向けて本当の戦いがここから始まります。【鳥越裕貴】



ノーサイドの笛が鳴り、喜ぶフィフティーン。シンビンでの一時退場から復帰後はビッグプレーを連発した
NO.8丸尾崇真選手は「(相良)監督には取り返す必要は無い…と言われていたのですけど、でもやっぱり(チームに)迷惑を
かけたので…。落ち着きながらも行こうと思って、攻められるところは攻めようと思った結果です。」

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