支配

23日、伝統の早慶戦。先制の50メートルを超えるドロップゴール、更には長短高低自在のキックでチームを
勝利に導き、マン・オブ・ザ・マッチに選出されたのが3年生SO岸岡智樹選手。

「ドロップゴールは想定外で見ている方もビックリしましたけど、ワールドクラスだなと思いました(笑)。
岸岡を中心として、エリアマネージメントについてはチームの中で意思統一したプランを思った通りに遂行
できたところが、その後の(ディフェンスでの)我慢とかに繋がったかなと思います。なので、今日の
エリアマネージメントについては満点に近いかなと思います。」(相良南海夫監督)

と指揮官も記者会見で笑顔を見せます。自陣から果敢に狙った前半24分の先制ドロップゴールは指揮官だけで
なくピッチ上の選手をも驚かせます。

「自分たちも分からなくて『何してんだ!?』と思っていたのですけど(笑)。天才しかああいうのは
出来ないと思いますし、ああいう場で一発で決められるのは持っている才能だなと思いました。練習でも
あのシュチュエーションはないですし、それでも決めるというのは岸岡らしいなと。流れが変わりました。」
(HO宮里侑樹選手)

想定外、天才、才能…と周囲の賛辞が続く中、当の蹴った本人は冷静に振り返ります。伏線は一つ前のプレー、
自陣22メートルライン付近から蹴ったキックが追い風に乗ってデッドボールライン手前まで転がります
(ドロップアウト)。

「ドロップアウトになった瞬間、一発狙っていいかなと思っていました。仮にドロップゴールがデッドで
あっても、もう一回ドロップアウトだったのであんまり変わらないですし、風向き的にも相手のドロップアウトは
飛んでもハーフウェー(ライン)だと思っていたので。風上で伸びてくれという思いも込めて蹴りました。
実際、真後ろから見ていた人は分かると思うのですけど、斜めになっちゃって風で入ってくれました。『ヤベッ
と思った瞬間に(風が吹いて)ラッキー』という…結果オーライです。」(SO岸岡智樹選手)

自身の記憶でも20メートルの距離しか決めたことがないという中で生まれたビッグプレーで流れを引き寄せます。
更には事前の分析で相手のキックの強い選手、苦手な選手を仕分けし、試合に入ると相手選手の誰が後ろに残って
いるのかを味方と確認しながら、キックを使い分けて終始エリアをコントロール、抜群のゲームメイクを見せます。

「裏に残っている選手の特徴、キャラクターを考えた上で、その選手が苦手なキックの種類を。その選手がキックの
得意な選手だったら(その選手のところに)キックを蹴らないとか、逆にちょっと滞空時間の長いキックを蹴って
ディフェンスを前に上げて、相手が取ってから何しようとか考える時間を奪うように蹴ってました。周りの選手から
『右裏には誰々が居る、左裏には誰々が居る』という声があったので、そういうコールのおかげで、キックが苦手な
選手にボールを落とすことによってマイボール(ラインアウト)に出してくれると…前半はエリアマネジメントとしては
ほぼ完璧だったかなと思っています。」

安定したキックの使い分けに味方選手からも「岸岡のキックで負けるというのはないと自分たちも思っていますし、
信頼もあります」(HO宮里侑樹選手)。

キックでゲームを支配しながらも、勝利をグッと引き寄せる後半27分のトライは「慶應さんのディフェンスが崩れた時」
(SO岸岡智樹選手)とスキを見逃さず、深い位置から走り込んだCTB中野将伍選手へのパスを選択します。

「僕以外の選手がオプションとなって攻める意識を持とうと、敵陣の中で『全員オプション』という今のワセダの体現が
そこで出来たかなと思います。表裏(ラインを)作っている中で、後ろから空いているよ…ということだったので、僕は
パス放っただけに近いです。みんな順目に回ってきた中で、みんなが判断して外側にスペースがある…と。あそこはSOと
しては放るだけだったので有難かった。」

自身のプレー選択については謙遜しながらも、今季のワセダの目指す形がトライに結びついた瞬間、司令塔として手応えを
感じます。

「今日の試合のテーマとしては、チームとしてディフェンスで勝つというのがありました。それが帝京戦でできなくて、
この1、2週間でBチームも含めてやってきた中で、今日はディフェンスで前に出れたと思います。例えば前半の相手が全然
攻められなかった時に、そこからのターンオーバーからトライが生まれたシーンとかそういうところはこの2週間積み上げて
きたものがしっかり出たかなと思っています。早明戦に向けて、あまり気負いすぎずに、自分たちがやりたいこと、やるべき
ことを確認していいゲームができたらと思います。」

対抗戦優勝が懸かる大一番を前に司令塔は自然体を強調、その落ち着きでチームを支えます。【鳥越裕貴】



前半、パスで試合を組み立てるSO岸岡智樹選手。次週は自身3度目の早明戦。「対抗戦の他の試合と違う
伝統の一戦。(同じ伝統の)早慶戦とはまた違った試合になってくると思いますし、今日を超えるような
いい試合が出来れば結果は自ずとついてきて、大学選手権にいいステップでいけるかなと思います。」

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