歴史

2日、超満員の秩父宮で行われた伝統の早明戦。一時18点差まで広げたリードもメイジの猛追にあって4点差に。
異様な雰囲気の中で迎えた後半ロスタイム、メイジの連続攻撃にCTB桑山淳生選手が食らいつき、孤立した相手に
すかさずNO.8丸尾崇真選手が絡みます。

「入った瞬間に取るしかないと。止め切って最高ですね。」(NO.8丸尾崇真選手)

攻守に体を張った2年生が相手のノットリリースを誘ったラストプレーを振り返ります。ともに持ち味を発揮した
伝統の一戦の最後はディフェンスで粘り勝ち、記者会見で指揮官も満足そうに話します。

「とにかくディフェンスで勝つということをテーマにしていたので、中盤のディフェンスは楽しもうと。
そういった意味では思った通りに、展開のアヤも色々あったと思うのですけど、今日はそういう80分間に
なったかなと思います。」(相良南海夫監督)

80分間、体をぶつけ合った選手達も勝因について口を揃えます。

「FWが粘り強くディフェンスしたところですかね。セットプレーでペナルティをする部分もあったのですけど、
そこじゃなくてフィールドのフェーズディフェンスの中で粘り強くいったというところが良かったですね。」
(NO.8丸尾崇真選手)

「間違いなくFWが頑張ってくれた事。FWがあれだけ頑張ってくれたからこそ、BKが自分らのやりたいアタックが
出来たと思います。」(CTB桑山淳生選手)

「繋がりながらのディフェンスというのはずっとワセダとして意識してやっている部分なので、練習してきた通りが
出せたかなと思います。」(WTB長田智希選手)

「大きい選手達も下に入り続ければ、自分たちが前に出続ければ、ゲインラインを取れると自信になりました。」
(FL幸重天選手)

安定したディフェンスで指揮官の狙い通りに終始リードを保ち、試合を有利に進めていたワセダの最大のピンチは
17-13で迎えた後半11分の自陣ゴール前でのメイジボールスクラム。前半からワセダが劣勢に立たされていた
スクラム戦を相手がペナルティから選択し、誰もが逆転を覚悟したその瞬間、意地を見せたのはワセダFW陣でした。

「ナメられて悔しいなと。あそこはFW8人で絶対ターンオーバーしようと声をかけていました。前半はイーブンの
高さで組んで、相手の第二波というかその重さで押されてしまっていた。(ハーフタイムに)安藤コーチから低さの
ところを修正するよう言われていて、相手より下で組むことができました。」(PR鶴川達彦選手)

相手のプッシュを堪えると逆にメイジが崩れてペナルティを奪取。雄叫びを上げるFW陣にBK陣が抱きつきます。
「まるで試合に勝ったみたいでしたね」と報道陣に話しかけられると、殊勲の5年生PRは少しはにかみながら頷きます。
相良監督も試合のポイントと振り返ったビッグプレーで、直後の14分、18分のCTB中野将伍選手の連続トライを
呼び込んで早明戦勝利、そして8年ぶりの対抗戦優勝。

「100周年で8年ぶりの対抗戦優勝、結果的に節目の年にこういうタイトルが取れたということは、素直に嬉しい事
だと思いますし、佐藤真吾の代として100周年の年に歴史が刻めたということは本当に良かったと思います。」
(相良南海夫監督)

記者会見、続けてマイクを握った佐藤真吾主将は「歴史に名を刻めたのかなという思いで嬉しく思います」。指揮官
と同じ言葉を繰り返した後に「でも…」と続けます。

「僕らの今の目標は『荒ぶる』なので、ここからが一番のスタートを切らなきゃいけないところだと思っています。
ここからは本当に1試合1試合落とせない…負けたら終わりです。」

過去2年、佐藤真吾主将が下級生ながら感じていたのは伝統の早慶戦、早明戦で緊張感もチームのピーキングも
上がりきった後の過ごし方の難しさ。記者会見、アフターマッチファンクションを終えて、拍手で待ち構える全部員の
輪の中に吸い込まれていった佐藤真吾主将は手締めの前に言葉を発します。

「ここからが大事、ここからがスタート。」

対抗戦優勝も佐藤組にとっては一つの通過点。対抗戦で敗れた帝京との再戦を制して”荒ぶる”を勝ち取った瞬間こそが
本当の意味で歴史に名を刻む時です。【鳥越裕貴】



ノーサイドの瞬間、喜びを爆発させるフィフティーン。倒れては起き上がってタックルを繰り返した選手達について
「ディフェンスでチームを作ってくる中で、春の途中からもっと意識して、ディフェンスで立つ人数を増やそうと。
そういうところは継続してずっと積み重ねてきたので、こういうビッグゲームで選手一人一人が意識して動けたのだと
思います。」(相良南海夫監督)


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