貫徹

22日、大学選手権準々決勝・慶應義塾大戦。ラストプレーで劇的サヨナラトライを決めたのが4年生WTB佐々木尚選手。

「個人的に呼び込んだボールでした。全体的に中央でFWがタテに攻撃していて、慶應大学もそこを固めていたので、
それを見てずっと河瀬君にも貰うように言っていましたし、外で取りきれるという確信があったので、呼んでいました。
あそこでタッチに出たり、ノックオンをしてしまうと自分のプレーで4年間が終わってしまうという事だったので、
絶対に取り切るという思いが強かったです。」

コーナーフラッグギリギリに飛び込んだトライを振り返り、笑顔を見せます。対抗戦・青山学院大戦(10月7日)以来の
先発出場、練習での調子の良さに加えて大一番での抜擢理由を指揮官が答えます。

「どちらかというとディフェンスがそんなにいい選手ではなかったのですけど、早慶戦、早明戦もリザーブで投入された
ところで、流れを変えるディフェンスを見せてくれていました。彼の高校時代は慶應(高校との対戦)で終わっていますし、
そういった思いに懸けたいなと。古賀か佐々木かというところだったのですけど、今日については4年生の佐々木の思い
と(練習での)パフォーマンスで、起用を決めました。」(相良南海夫監督)

前半にはチームのピンチを救うトライセービングタックル、思い切りの良いディフェンスを見せるなど期待に応えます。

「今年からディフェンスで勝つというテーマがあって、個人的にディフェンスがウィークポイントだったので、海外
ラグビーの詰めのディフェンスを採用しているチームの映像とかで、色んな選手を見て勉強していますし、そういう
部分で成果が出たかなと思います。」

ニュージーランドやオーストラリアなどのチームの映像を三井大祐コーチとチェック、課題のディフェンスを改善し、
4年生らしい体を張ったプレーでチームを鼓舞します。そして何より佐々木尚選手を突き動かしたのは慶應義塾に対する
思い。中学校時代から対戦を重ね、高校(桐蔭学園)時代には花園行きを阻まれた因縁の相手、進路を悩んだ4年前を
振り返ります。

「花園に出ていないという事は、一生の汚点というかそういうものが自分としては残っています。慶應大学から合格を
もらっていたのですけど負けた相手なのでリベンジしたいなと思っていました。ジャージを変えてリベンジする場所は
どこかと考えた時にアカクロのワセダで、早慶戦で勝ちたいというのがあって最後にワセダを選びました。」

3年生だった昨年度シーズンに早慶戦に出場、勝利を収めるものの

「あれは加藤(広人前)キャプテンの代の実績です。慶應(高校)が花園に行った時の3年生が、大学で4年生になった
時に勝ちたいというのがあったので、今日はすごく思い入れがありました。」

不動のレギュラーとして活躍した昨シーズンとは異なり、今季は下級生の台頭もあってリザーブスタートとなる機会が
増えた中でも、しっかりと準備を怠らずに迎えたこの日の大一番での大爆発。同学年の佐藤真吾主将が記者から
佐々木尚選手の存在について聞かれ、答えます。

「部内一、ストイックな選手だと思います。食事に関して、毎日の三食以外のところでも全てにおいて…一つ口に入れる
ものでも気を遣っていたりだとか、試合のメンバーは一昨日くらいからウエイトはないのですけど、毎朝…今日も6時半に
起きてトレーニングしたりとか、あとは自分だけの練習メニューで足とかに(器具を)装着して筋トレしたりだとか、
練習後のウエイトは毎日必ず色んな部位をやっていたりだとか、数え切れないくらい。他の人から見ても凄すぎると
いう声があがるくらいの選手です。」(佐藤真吾主将)

佐々木尚選手本人は「(今日の6時半のは)体に刺激を与える程度」と苦笑いを浮かべつつも、中学時代から合計3度の
ヒザの手術を経験してきた体だけにその管理には気を遣っていると話します。

「すごく欠陥のある体だなという認識があって、準備の段階では人一倍備えておかないといけないという意識があるので
食事とかトレーニングには拘っているつもりです。自分の強みが出るような体にしたいので、体脂肪は一桁台をキープする
ような食事、その日の体調や練習強度に合わせて自分で栄養素を考えて摂るようにはしています。トレーニングも
体を重くしたくなくて、重量をどんどん上げていくという考えではなくて、体の芯の分、体幹だとか実用的な筋力を
鍛えるようにしています。」

4年越しの慶應へのリベンジを果たして、次に見据えるのは大学日本一。

「高校の時(桐蔭学園)のスローガンで『初志貫徹』というのがあって、それは今でも大事にしている言葉です。初めに
抱いた志とか目標とかは最後まであきらめずに、ひたむきに頑張っていこうという気持ちがあるので、『荒ぶる』を
取れるように頑張っていきたいと思います。」

卒業後は一般企業に就職予定、ラグビーは大学で最後と決めている佐々木尚選手。ラグビー人生の集大成、最後の一瞬まで
自分と向き合い続けます。【鳥越裕貴】



スタメン出場で2トライと活躍したWTB佐々木尚選手(写真は対抗戦・明治戦)。
「(試合後)当時の慶應高校出身の友達、古田キャプテンや中本君、宮本君、丹治君とか…次勝てよ、
頑張ってくれと。慶應大学の選手の思いも背負って、次も絶対勝ちたいと思います。」

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