継承

2日、大学選手権準決勝・早明戦。4点を追うラストプレー、準々決勝・早慶戦のサヨナラトライの再現を狙って、
自陣から連続攻撃を仕掛けるもののメイジの粘り強いディフェンスの前にラックからボールがこぼれます。

「ワントライ取れれば勝てるというところまで追いついたのですけど、やってる個人としては完敗かなと思って
います。例えばピラミッド上に何かを積み上げていく時、一番最初に”Moving”というものがあって、その上に
スキル、判断能力というものを積み上げてきたつもりだったのですけど、最終的に『Movingしよう』と自分たちの
口から出したこと、根源まで戻ってきてしまったのはメイジさんのプレッシャーが強かったのかなと思いますし、
今日の敗因かなと感じました。」(SO岸岡智樹選手)

後半立ち上がりには40フェーズ近い連続攻撃を仕掛けながらもメイジディフェンスを崩せず、ピッチの外から見て
いた主将も、12月の対抗戦の時との違いを口にします。

「ディフェンスのしつこさが明らかに違ったかなと思います。ワセダとしては後半、敵陣ゴール前で何十フェーズも
アタックし続けたのですけども、こちら側も少しテンポの悪いところもありましたが、明治大学さんにあそこまで
我慢されると…。」(FL佐藤真吾主将)

メイジの意地、迫力に押されながらも、ワセダも終盤にCTB桑山淳生選手、WTB佐々木尚選手のトライで応戦、
最後まで勝利に望みを繋いだ戦いぶりは、来シーズン以降の”荒ぶる”奪還に希望を与えます。

「年越ししてからの準決勝、決勝というのは他のどの試合よりも雰囲気とか試合の感覚も全然違うので、今まで経験
できていなかった分、その経験は来年につながるのかなと思います。プレッシャーだとか、負けたら終わりという不安、
恐怖、緊張…そういうところは今回ここまで残れたという事で感じたと思いますし、ここまで残り続ける事がワセダに
とっては大事です。来年、準決勝に来た時に『去年ああだったから。練習中、試合中こうだったから。』とか。そういう
話し合いを来年してくれたら嬉しいですね。」(FL佐藤真吾主将)

トップチームの経験値がそのまま下級生の多い来年のチームに引き継がれるのは勿論、試合に出られなかった4年生の
最後の生き様もまたワセダらしく、後輩達に脳裏にしっかりと刻まれます。

「『4年が支える』と言うのは4年生がよく言っていて、一人一人がリーダーの意識を持って発言している学年でした。」
(SO岸岡智樹選手)

元日も部内マッチで多くの4年生が「最後に死ぬ気で戦っている姿」(FL佐藤真吾主将)を見せるとゲームリハーサル、
試合前アップでは練習パートナーを務めるのは勿論、練習用具の準備から片付けまで4年生が率先して行います。
その姿は今季1年生ながらスタメン出場を続けるルーキートリオにもしっかりと伝わります。

「1年生で出させて頂いて…。チームの代表という意識を持ちながら試合に挑んだのですけど、スクラムで自分が
ペナルティを取られてしまったりして不甲斐ないというか…4年生には申し訳ないと思います。」(PR小林賢太選手)

「東京に来て、4年生や先輩方にお世話をしてもらって…。自分が1年生から出させてもらっている分、出られない4年生が
居て…。支えてもらっているのは分かっていたので、勝ってその4年生に恩返しがしたかった…申し訳ないという気持ちが
ありますし、悔しいです。こんな思いはもうしたくないので、来年からは優勝して恩返ししていきたいです。」
(FB河瀬諒介選手)

河瀬選手と同じ大阪(東海大仰星)から上京した長田智希選手も4年生の姿に驚き、そして刺激を受けたと続きます。

「僕が中学、高校と1年の時の最高学年ってむちゃくちゃ怖かったので、先輩というのは怖いというイメージがあったの
ですけど、皆さん優しくていい先輩で…。昨日の試合(元日の部内マッチ)でも本当に4年生がむちゃくちゃ体を張っていて
刺激をもらいましたし、自分もやろうと思いました。大学選手権で久々にここまできたというのは4年生がチームを作り
上げてきたからこそだと思うので、ここで負けた4年生の分も来年は更に上に行けるようにやっていかないといけないです。」
(WTB長田智希選手)

アフターマッチファンクションが終わり、集合場所へと視線を落としながら向かう出場選手。待っていた4年生部員は
その姿を見つけると笑顔で拍手を送ります。間もなく大きな円陣が出来、その中心で佐藤真吾主将が後輩達に最後のエールを
送ります。

「ここまでいいチームを作ってきたけど、結果が全て。今まで僕らが作ってきた雰囲気だとか、いいところは吸収して、
この悔しさを絶対忘れないで来年からに生かしてほしい。絶対下を向かないで、前を向いて歩こう。明日から頑張って
ください。」

この試合でゲームキャプテンを務め、来年もチームの中心となるSO岸岡智樹選手はリベンジを誓います。

「4年生への思いを込めるとしたら、昨日の部内マッチで見せてもらった4年生の意志というのを今日の試合の反省とともに
来年生かせればと思います。僕らの代は結構1年生から何人か出させて頂いていて、経験もあると思いますし、各世代の
スコッドに選ばれるような選手もちらほらいます。でも、そういうものに頼らず、4年生のチームじゃなくて、1年生が
どこまで頑張れるかとか、来年入ってくる選手だとかを含めて本当のワンチームというのを来年意識していきたいと思って
います。」

佐藤真吾主将が拘り続けたワンチーム、その考え方は次の世代にも継承されていきます。【鳥越裕貴】



最後まで部員全員で駆け抜けた一年間。佐藤真吾主将は今季のチームについて
「今まで体験した中では考えられないくらい全員が試合を応援していて…。チームがまとまっていて全員が
勝ちたい、全員が出たい。試合に出られない人も出る人のために献身的に動いてくれたりだとか、そういう
意味でワンチームだったかなと思っています。」

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