成長

21日、対抗戦王者・帝京大戦。前半からリードを奪って31-21で快勝、勝利を告げるノーサイドの笛が鳴り響いても選手達は淡々と
健闘を称えあいます。一年前の夏は雄叫び、抱擁の連続だった対帝京戦ノーサイドの瞬間、その違いをSO岸岡智樹選手が話します。

「同じ勝ちにしても、勝ちの大きさといいますか、去年は”まぐれ”というか3回やって1回勝てた試合が出たという嬉しさ、
今年に関しては”1回分の1”の試合。自分たちでしっかり準備してきた事、勝ったことが”まぐれ”でなくて、勝つべくして勝ったと
いうのが昨年との違いだと思います。」(SO岸岡智樹選手)

序盤からスクラムで優勢に立つと14分、スクラムで組み勝って相手が堪らずペナルティを犯した直後の右ラインアウトモールを
押し切ってトライ。21分、敵陣ゴール前ペナルティから強気にスクラムを選択、ここからSO岸岡智樹選手がトライ。起点として
機能したスクラムにNO.8丸尾崇真選手は胸を張ります。

「うちはファーストスクラムに拘っていて、準備の段階で帝京がどういう組み方かを分析して、自分たちの強みをどうやって出すかを
突き詰め、シミュレーションしてきたので、準備の段階で勝ったかなと思います。」(NO.8丸尾崇真選手)

2ヶ月前、完敗した相手を押し込むスクラムに部員席も大盛り上がり、前半21分の時点で21-0とリードします。

「スクラムで勝てたことでチームに勢いをもたらす事が出来ました。ペナルティを取った時とか、得点に繋がった時はやってきたことが
報われたじゃないですけど、自分の気持ち的にもポジティブな気持ちになれます。スクラムを押せたらFWだけじゃなくて、BKの方も
『試合の流れが変わる』と言ってくれたので、その点でもスクラムがすごい重要なプレーだとまた身に染みて感じました。」
(PR小林賢太選手)

前半終了間際には「途中で相手も組み方を変えてきて、僕らも難しくなった部分もあった」(LO下川甲嗣選手)、「キツい時間帯に
なって自分たちのセットアップが出来なかった」(PR小林賢太選手)とタテ続けにスクラムを押し込まれて失点、試合の流れが
傾きかけます。直後のハーフタイム、リカバリをしながら2年生PR小林賢太選手が声を発します。

「自分でも分かっていることを周りに発信していかないと、後半入るにあたって改善できないです。押せるスクラムが最初の方に
あったのでそこの意識を持っていこうという話をしました。」(PR小林賢太選手)

後半立ち上がり2分、敵陣ゴール前の相手ボールスクラムを押し込んでターンオーバー、ここからWTB桑山淳生選手のトライに繋げて
再びスクラムで試合の流れを引き寄せると、この後もトライを追加して31-7、勝負を決めます。短時間で見せた修正能力に
LO下川甲嗣選手も手応えを感じます。

「春シーズンが終わった後にやってきた試合中にコミュニケーションを取って改善、修正していくというところが出ました。今まで
だったらセットプレーでダメだった時とかズルズル行っていたのですけど、そこで修正が利くようになってきたかなと思います。」
(LO下川甲嗣選手)

プレー中の対応力はスクラムだけでなくラインアウトでも。前半、自陣ゴール前で迎えた相手ボールラインアウトの場面で
競り合ってボールを奪取、当初のプランを選手達同士で変更して勝負を懸けてピンチを脱出します。セットプレーで相手を上回っての
勝利、春からの成長にFW陣も自信を深めます。

「勝つべくして勝った。FWで勝てればこういう試合になるのだなと実感しましたし、自信になりますね。プライドを取り戻す…
そういう夏合宿に出来たかなと思います。」(NO.8丸尾崇真選手)

「春から一番変わったのはFWとしてスクラムに対する思い。みんながスクラムを課題として感じたので、課題に全員で取り組めたのが
天理戦、帝京戦の結果に繋がったのではないかと思います。」(PR小林賢太選手)

更にセットプレーの安定はフィールドプレーにも好影響を。後半9分にダメ押しトライをあげるなど再三、帝京ディフェンス網を
突き破ったPR小林賢太選手は

「セットプレーに余裕があったので、その分フィールドでももっとボールキャリーをしようという意識ももてました。第一は
セットプレーなのですけど、フィールドももっとキャリーしてゲインできたらと思います。他の事も考えられるような余裕も
出てきたかなと思います。」

と話せば、LO下川甲嗣選手も

「FWで勝つ事によってこんなに試合運びが楽になるのだとみんな実感できて、だからこそもっとセットプレーを磨いて、こちらの
テンポでこれからも運んでいけたらいいですし、余計セットプレーに対する意識が高くなったのかなと思います。」

と続けます。菅平で天理大、帝京大と東西の強豪校をFWで上回って連破、それでもまだ夏は通過点とすぐに表情を引き締めます。

「僕達はまだ成長段階です。まだ途中で気を抜いてココは大丈夫だろうと思っているスクラムでペナルティを取られたので、
すべてのスクラムで100%で行きたいですね。ブレイクダウンも詰めが甘いと言うか、僕達がしようとしているブレイクダウンの
理想には遠かったかなと…。球は出ているのですけどブレイクダウンで相手を倒しきる…まだボールを守るというまでで
ブレイクダウンを制圧していないです。これに慢心しないでもっと成長しようと思うことが大事です。」(NO.8丸尾崇真選手)

「天理戦、帝京戦、両方とも自分たちがやろうとしているスクラムが何回かできることがあったのですけど、やっぱりまだ
押せるスクラムの形はある中でも押されてしまうシーン、ペナルティを取られてしまうシーンがあったので、まだムラがあります。
成長できた分も見つけられてよかったのですけど、課題もまた見つかったので、それをまた修正していかないと。」
(PR小林賢太選手)

「スクラムに関してはいいところもあったのですけど、押されるところもあったので、ムラがあるというか課題だなと思います。
ここで慢心せずに成長し続けないと、対抗戦とか相手も修正してきて、違うチームで戦うことになるのでまだ時間はあるので、
成長していきたいと思います。」(LO下川甲嗣選手)

試合が終わり、全部員で大きな輪を作り、その中心でこの日復帰したSH斎藤直人主将が話します。その内容を明かします。

「少なからず自信にもなりますし、(帝京大に勝利して)今年ももちろん嬉しかったのですけど、それよりもすぐに課題が
見つかった。課題の話をみんなと出来たと言うことにチームが成長したのかなと思いますし、勝って当たり前という文化、勝って
反省できる環境を作っていこうと皆で話していました。」(SH斎藤直人主将)

勝って驕らず。2000年代に5度日本一に輝いたあの頃に感じた勝者のマインドを選手達の言葉の端々に思い出します。【鳥越裕貴】



後半、中央突破でチャンスメイクするLO下川甲嗣選手。「春が終わった時点から帝京と天理の試合があると言われて、そこを
ターゲットとしてやってきて、そのターゲットを倒せたというのは自信になると思います。」

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