新風

21日、大学選手権初戦・日大戦。負けたら終わりのシーズン最終盤、初めてスタメン出場を果たしたのがルーキー
CTB吉村紘選手。首脳陣からの「思い切りやれ」の言葉とともに緊張をほぐしてくれたのはコンビを組んだ先輩の言葉だった
と振り返ります。

「僕がCTBで初スタメンというのもあって、長田さんがすごい事細かに声をかけてくれて、ストレス無くゲームに入ることが
出来ました。ディフェンスレンジが広くて危ない時にはすごい助けに来てくれて頼もしい先輩です。」

本来のSOではなく12番で出場、先輩の支えも受けながらアタックでは持ち味の展開力で空いているスペースにボールを運んで、
ランナーを次々と走らせます。前半40分にはディフェンスを引き付けながら絶妙のラストパス、FB河瀬諒介選手のトライを
演出します。

「オーバーラップが出来ているのは外からの声でわかっていました。相手も(ワセダが)余っているのが分かっていて外から
被せて来たのですけど、あの狭い距離だと頭を越しては放れない…自分が仕掛けたところでうまくギャップを突いて放れた
かなと思います。スペースがあれば皆さん取ってくれるランナーばかりなので、いいスペースがある状態で渡せたらと思って
います。」

タックルとともに課題と振り返るのはポジショニング、プレーの見極め。後半最初のスローフォワードとなったパスを話題に
出して反省の言葉を並べます。

「ああいうイージーなミスをしているようだと決勝とかでは通用しないです。予想以上に(ディフェンスが)前に来ていた
ので、もうちょっとポジショニングを深くためて、外に運べたらスコアに繋がっていたかなと思います。精度高く、チャレンジ
するところと固くいくところの見極めをしっかりやっていきたいと思います。」

それでも、この日見せた岸岡智樹選手とのダブルSOは展開力アップに魅力的な攻撃オプション、吉村選手もこの点においては
手応えを口にします。

「(中野)将伍さんみたいなプレーは僕には出来ないので、スキルとか周りを生かすところで勝負して行きたいと思います。
岸岡さんがラックに入った時は僕がSOに入ってコントロールできて、いい感じで岸岡さんに渡してプレーできていたので、
そこは良かったと思います。」

初スタメンで存在感を見せ付けたのが吉村選手なら、ラスト8分の出場で強烈なインパクトを残したのが同じルーキーの
SH小西泰聖選手。後半37分、センタースクラムからの8-9でディフェンス網を突破すると爆発的なスピードでインゴールを
陥れます。

「(NO.8の)丸尾さんにちょっとだけ持ち出してと伝えていて、それが上手くハマりました。頭の中ではパス6割、ラン4割
くらいだったのですが、前が空いたので行くしかないと。そこは責任だと思いましたし、自分の強みを生かす場面だったので、
行かせて貰いました。このグラウンドには良い思い出もイヤな思い出もあるのですけど、今回はいい思い出を一つ残せたので
良かったです。」

対抗戦終盤の帝京戦、慶應戦、明治戦と全てメンバー入りした吉村選手と対照的に3試合ともスタンドで観戦した小西選手は
「悔しい思いを抱えたまま対抗戦を終えた」と振り返ります。その間、同じ経歴(桐蔭学園→ワセダ)、同じポジション
の後藤翔太コーチと毎週のように約2時間の個別セッション、徹底的にパスを磨き上げたと振り返ります。

「BKのチームの中ではパスが絶対条件、ランがいくら得意でもパスが通らなかったらハーフとして使ってもらえないです。
ハーフで日本代表にまでなった人と出会えて、スゴい色んな事を教えてもらっています。パスの投げ方自体を変えているので
最初はそこがなかなか難しかったですけど、パスの安定度とかやる度に日に日に成長している、変われてきているなと
いう実感を自分でも感じるのですごい大事な時間です。」

後藤翔太コーチから基本をみっちりと叩き込まれる一方で、生きた教材として刺激を受けているのがこちらも同じ経歴を辿る
SH齋藤直人主将。

「直人さんからはプレー中にラックからどう捌いているのか、プレッシャーを受けた時にどう捌いているのか、プレーの
中での捌き方を教わっています。一緒にパス練をさせてもらったり、キックの練習をさせてもらったり、一緒にやると
いう事が一番勉強になるというか言葉は無くても、一緒にいることで勉強になります。もっともっと一緒にやりたいです。」

元々持ち合わせていた圧倒的なスピードに加えて、二人の偉大な先輩から吸収し、磨き上げてきたパススキル。シーズン
終盤に魅力的なワンピースがメンバー入り、先行するFL相良昌彦選手ら同期の存在は刺激になっているか?と聞くと
返答は間髪いれず。

「なってます!一緒にいつも練習している仲間なので勇気が出ます。」(SH小西泰聖選手)

同じ質問を吉村選手にぶつけるとこちらも間髪いれず。

「刺激になりますね!相良とか最前線で頑張っているので僕も頑張らないとなと思います。」(CTB吉村紘選手)

ルーキー同士、互いに刺激を与えながら再起を懸けるチームに新しい風を吹き込みます。【鳥越裕貴】



CTBで初スタメンの吉村紘選手(左)と途中出場のSH小西泰聖選手(右)。ワセダの次代を担うHB団候補が
西の聖地で揃って躍動。

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