成長

11日、大学選手権決勝。後半残り10分で10点差、最大31点あったリードからメイジの猛追にあって国立競技場が異様な雰囲気に包まれる中、
試合を決定付けるトライをあげたのが4年生・WTB桑山淳生選手。

「WTBとしての役割はやっぱりトライを取る事。トライを取るためにボールタッチの数を増やしたりだったりというのを特に意識しながら
やっていて、決勝でうまくトライを取ることができたのはすごく良かったです。」

4年生としてワセダでのラストゲーム。決戦前夜は「いろいろ思い浮かべた」と胸の内を明かします。

入学して早々の5月、春招待試合・同志社大戦で岸岡智樹選手らとともに同期でアカクロ一番乗りを果たすも、出場2戦目の花園での
春早慶戦でひざの前十字靭帯を負傷する大ケガ、1年2ヶ月に及ぶリハビリ生活を強いられます。齋藤直人選手、岸岡智樹選手、中野将伍選手ら
同級生BK陣がルーキーイヤーから躍動する姿を嬉しい反面、悔しさを持ってスタンドから見つめる日々が続きます。

出来る事をしようと割り切って国立スポーツ科学センター(JISS)で復帰に向けてトレーニング、意識したのは股関節やお尻まわりの強化、
一歩が大きくなり、当たり負けしない強さとしなやかさを兼ね備えた体へとモデルチェンジして満を持しての復帰。2年生時の成蹊大で
対抗戦スタメンデビュー、WTBで4トライをあげる活躍を見せるも勝負所の慶應戦、明治戦ではメンバー外、再び悔しい思いをします。

「自分が出たらもっと出来る、もっと前に出られる、もっと得点に絡めるし、アタックの幅が増えるなと思っていたのですけど、出られない
という状況に対して、自分に何が足りないのか、チームとして何が求められているのかを探し続けていた感じです。(今思えば)チームが
やりたいことと僕がやりたいことがマッチングしていなくて、そこに対して僕がチームに対してのすり合わせをしていなかった。」

その反省から3年生時にはコーチ陣と密にコミュニケーションを取るように。リハビリ期間中に行った肉体改造とチームの中で求められる
役割が噛み合って才能が一気に開花、WTBからCTBにコンバートされてレギュラーポジションをがっちりと掴み取ります。

「もともとCTBをしたくてワセダに入ってきて、3年生の春にCTBでやらせてもらって、自分のやりたいポジションとなったら色々
イメージが沸いてきました。コーチにも何を(自分に)求めているのか、その中で僕がどういう強みを出していけばよいのか分かった
上でやってこれたと思います。」

自らを「ジコチュー(自己中心的)」と話すものの、故障離脱や下のチームを経験してきた分、考え方も大きく成長、4年生時のWTBへの
再コンバートも前向きに捉えます。

「Bチームだったり、その下のチームの気持ちがわかるようになって、個人としてというよりもチームとして勝ちたい、チームが勝つために
自分が何をすべきかっていうのを模索し続けてきました。(やりたいポジションから離れる)悔しい思いもあったのですけど、長田自体も
すごいいい選手ですし、チームが勝つため、WTBとしての楽しさというのも4年生になって見出すことができました。」

イチ学年上の兄・聖生選手(現東芝)もオフの日には上井草や試合会場に駆けつけて淳生選手ら後輩にエール。ルーキーイヤーの開幕戦で
トップリーグスタメンデビューを果たすなど活躍する兄からは決戦前、「頑張れよ」のメッセージが送られます。

「『お前もな』と返しました。」

と照れ臭そうに笑いながらも、誰よりも自分の事を理解してくれている兄・聖生選手の存在について続けます。

「色々と兄が言ってくれるのは落ち着く部分があったりもしますし、兄が活躍しているのを見て僕自身の刺激になっているというのは
ありました。」

迎えた決戦当日、ディフェンスでもアタックでも攻めるというチームの決め事通り、攻守に躍動。前半17分、後半12分とピンチの場面で
ボールを取り返すなど要所でディフェンスが光れば、アタックでもタッチライン際で再三のゲインを見せます。強みのサポート、アングル
チェンジを出せたと振り返るワセダでのラストゲームのハイライトは後半34分の冒頭のトライシーン、スクラムからの8単で抜け出した
NO.8丸尾崇真選手からのラストパスを受けて約30メートルを走りきります。

「サイン自体とはちょっと異なっていたのですけど、そこで崇真(丸尾)が抜けた時に明治のディフェンダーよりも早くサポートに
つくことが出来て、トライを取ることができた。サポートの寄りの部分でワセダらしさが出た場面だったんじゃないかなと思います。」

CTBでプレーしていた時に強く意識していたボールのあるところにすぐ寄るサポートの意識が、最後の最後で実を結びます。インゴールに
駆けつけたメンバーにもみくちゃにされた次の瞬間、様々な思いがこみ上げます。自分が自分が…と思っていた下級生時代から様々な
経験を経てチームの為に…と体を張る最上級生へ。ケガをして周囲のサポートの有難さを知り、メンバーから外されて下のチームの思いを
知った…家族の支えも含めて全てに感謝するように新国立の空を見上げました。【鳥越裕貴】



後半34分、試合を決定付けるトライをあげて空を見上げるWTB桑山淳生選手。卒業後は兄・聖生選手と同じ東芝へ。「早めにトップリーグの
スピード、フィジカルに慣れてもっと進化した自分が見せられたらと思います。」

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