爆発

11日、大学選手権決勝。持ち味のダイナミックなランでチームに勢いを与え続けたのが3年生NO.8丸尾崇真選手。前半12分には
右ラインアウトからタッチライン際に残ってボールを待ち、CTB中野将伍選手からのラストパスを受けてチーム初トライを記録します。

「サインプレーがうまく決まったかなと。ワセダの流れにしたかったのでいいスタートを切れましたね。」

今シーズンはLO下川甲嗣選手とともに3年生委員に就任、学生幹部の一員に。役割を意識し、発言や行動に責任を持つことを自然と
心がけるようになったと自身の変化を話します。背番号8を背負って2年続けて対抗戦にも全試合出場、不動のエイトマンとしての
地位をチーム内に確立しながらも、対抗戦の出来は満足できるものではなかったと振り返ります。

「対抗戦が始まって、自分のプレーが良くないというのは自分でもわかっていて、周りからも言われる事もありました。頑張っている
けど結果が出ていないというもどかしい気持ちを抱えたままで対抗戦が終わってしまいました。」

コンディションが悪い訳でもないのに上がらないパフォーマンス、大学選手権初戦を前に高校時代の恩師である早実・大谷寛監督や
チームをスポーツ心理学で支える布施努さんと話をするうちに考えすぎていた自分に気付かされます。

「変にチームのことを考えてすぎていました。委員という立場で、みんなの模範にならないとみたいに…。周りを生かそうだとか、
自分以外の人に譲っちゃったりだとかそういう部分もあって難しくしていたのですけど、結局考えすぎでしたね。」

恩師から言われた一言が丸尾崇真選手の心に刺さります。

「『お前の良さなんて、ボールを持って外で走ることなんだからそこだけをフォーカスして、そこから逆算していけばいい』…と。
やる事をいっぱいやろうとするのではなくて、自分の強みを一個に絞って出してみろと言われました。自分の中ではその言葉は
大きかったですね。僕の良さって、いい意味でジコチューだったり、わがままだったりというところだったと思うのですけど、僕の
やりたいようにやれば、それがチームにいい影響を与えると吹っ切れました。スッキリして選手権に臨めました。」

自分は自分らしく…心の整理をつけて持ち味の思い切りの良さを取り戻した丸尾崇真選手は元日の上井草グラウンド、
準決勝・天理大戦を前にした決意表明で仲間たちに宣言します。

「今シーズン、ワセダのナンバーエイトとして相応しいプレーをしていない。準決勝、決勝で必ず取り返します。」

準決勝、天理大のキーマンCTBフィフィタ選手のトライの直後、得意の8単でゴール前までロングゲイン、相良昌彦選手の
トライを演出、相手の反撃ムードを打ち消す値千金の好走を見せます。この日もメイジに10点差に詰められた直後の後半34分、
再び8単が炸裂、ラストパスをWTB桑山淳生選手へと繋いで勝利を決定付けます。

「流れがちょっとメイジに傾きかけていて拙いなと思っていたのもあったので、一か八か…でも勝つ確率が高い賭けを仕掛けて、
勝ったという8単でしたね。スクラムが決まった時点から(行く)可能性としては用意していて、組んで行けると思っていきました。
メイジからしたら痛い失点だったと思います。」

勝負所でスピードに乗った8単を連発。攻守に縦横無尽にグラウンドを駆け回り、スポーツ紙などでMVP級の活躍と評価された元日の
誓い通りの大爆発に胸を撫で下ろします。

「本当にファンの人とか応援してくれる人に今年の対抗戦はあまりいいプレーを見せられてなかったので最後ですけど、本当に
最後だったのですけどいい形で自分らしく終われたかなと思っています。多くの人が喜んでくれたので本当に良かった、
嬉しかったですね。」

歓喜のノーサイドのホイッスル、喜びの感情は勿論沸き起こりながらもその笛の音を一人違った形で受け取ります。

「試合の(終わりを告げる)笛が鳴った瞬間から次の事を考えていました。もう一年頑張って、またここに戻ってこよう、自分の
代でも必ず優勝しようと。自然と涙が流れてこなくて、これは来年まで取っておくものなんだと思いました。」

決勝戦後に行われた祝勝会、部内一の努力家・SH齋藤直人主将が後輩達に冗談交じりにエール…「”明後日”くらいから連覇に
向けて練習してくれると思います」…会場が笑いに包まれます。祝勝会後のホテルのロビー、話を聞いた去り際に丸尾崇真選手が
微笑みます。

「”明日”からまた頑張ります!」

3年生となり学生幹部の一員という立場に成長を感じながらも、同時に悩み苦しんだ一年間、最後は自分らしさを取り戻して
11年ぶりの『荒ぶる』に貢献。迎える来季は最上級生、自然体でチームを牽引したいと意気込みます。【鳥越裕貴】



前半12分、先制トライをあげるNO.8丸尾崇真選手。大学王者となり来季は追われる立場のチームに。
「連覇とかあると思うのですけど、今年は今年で次は次、それぞれのカラーがあって優勝があると思います。引っ張っていく
立場、この一年で委員とか上の人間になったのですけど、あまり考えすぎずに自分らしくやっていきたいと思います。」

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