努力

25日、地元主催の上井草グラウンドでの優勝パレード・優勝報告会。ファンとの交流会で一人一人の言葉に丁寧に耳を傾け、
終始笑顔を見せていたのが4年生LO三浦駿平選手。

「こんなに来て頂けるとは思わなかったので、めちゃくちゃ嬉しいですね。ビックリしましたし、皆さんに応援してもらって
いたのだなという実感が沸きました。」

決勝戦では攻守に体を張り続けて、セットプレーでも対抗戦の早明戦でやられた分をしっかりとお返し、「4年間で一番の
パフォーマンス」と振り返る活躍を見せます。

秋田中央高校から入部、2年生でレギュラーポジションを一度は掴むものの、3年生シーズンは帝京戦以降、プレーの出来に
波があると指摘を受け、スタメンから外されて苦しい思いをします。

「信頼を勝ち得なかった…使いづらい選手と首脳陣から言われて出られなくて…。その分、3年生シーズンが終わった時に
信頼を勝ち得て、『絶対三浦は出そう』という選手になろうと決めた。」

チームで一番仲が良い幸重天副将をして「本当にストイックで頑張り屋さん」。地道な努力を重ねてラストイヤーは攻守に
安定したプレーでレギュラー返り咲き。対抗戦・青山学院大戦ではLOという”縁の下”のポジションにおいて、その下働きで
マン・オブ・ザ・マッチを受賞するなどFWに欠かせぬ存在に。そうして積み上げてきた自信、プライドがズタズタにされたのが
12月の対抗戦・早明戦。試合後、プレーを分析すると目立ったのはタックル回数の多さ、そしてタックルミスの多さでした。

「『何でだと思う?』と相良さんと話した時に、たぶん狙われていたんじゃないか…という結論になりました。(本当の
ところは)分からないのですけど、もしかしたら穴だと思われていて、攻められていてそれで(タックル回数が)多かった
のかもしれないという話をされて…。悔しいですよね…。そう言われて…。」

早明戦翌週、最初の練習はバチバチの激しいタックル練習がFW陣の練習メニューに組み込まれます。

「権丈さん(コーチ)が泣きながら、『こんなんじゃ足りない!』…と。自分もかなり感極まりましたし、やっぱりこのまま
じゃダメだ…強気に行く姿勢が大切だとメンタルから変わったと思います。」

受け身がちだった早明戦を猛省し、”勝ちポジ”を強く意識すると出足が改善、コンタクトに負けない姿勢で動けるようになった
と実感。大学選手権開幕までの3週間、チーム練習後もコンビを組む下川甲嗣選手やBKの下級生を捕まえて居残りでディフェンス
練習の時間を設け、コーチ陣のアドバイスも得ながらその感覚を体に覚えこませます。

自身の心身を極限まで追い込みながらも、最上級生として気配りも欠かさず。その存在を「僕にとってはアニキ」と慕う
3年生・下川甲嗣選手は早明戦で苦戦を強いられたラインアウトに悩んでいた時期、その言葉に救われたと振り返ります。

「僕がラインアウトリーダーをやっていたのですけど、(早明戦後)自分でもどうしたら良いか分からない…混乱した時があって、
メンタル的に萎えている時に『他の人を使っていいよ』とか僕の気持ちが楽になるような言葉をかけてくれたり、相談に
乗ってくれました。すごく嬉しかったですし、寮内でも一番コミュニケーションを取る時間が多かったのでお世話になりました。
その分、試合の時もこの人と勝ちたいとそういう思いは強かったですね。」(下川甲嗣選手)

後輩とともに悔しい思いは二度としたくない…誰よりも強く戦い続ける、体を張り続けると決意を込めて迎えた決勝戦。
積み上げてきた努力を間近で見ていた試合に出られない同期の言葉を寄せ書きの中に見つけて、気持ちを高ぶらせます。

『4年間で体が一番大きくなって、一番伸びたのはお前だ!』

背中を押されて新国立のピッチに飛び出すと、フィールドプレーで、セットプレーで「やってきた事を全部出そう」と
獅子奮迅の活躍。12月の対抗戦で制圧されたセットプレーでも、メンバー外の4年生の事前分析を支えに安定、チーム6トライ中
5トライの起点となるなど勝利に大きく貢献します。

「Bチーム以下の分析があってラインアウトでしっかりプレッシャーをかける事ができました。頼もしかったですね。
マイボールでは対抗戦とはチョイスを少し変えて(明治LO)片倉がキーなんで、相手を見てそこを外して取りに行きました。
スクラムも早明戦が終わってからの3週間、ブレイクダウンの練習もしたのですけど、スクラムもこのままじゃダメだと鍛え
直して、低さとかまとまりのディテールに拘ってやれば大きくて強い相手にも勝てる…と。日大戦、天理戦、最後の明治戦でも
練習の成果が出せたと思います。」

3年生シーズン終盤でメンバーを外されて味わった悔しさ、12月の早明戦で味わった”狙い撃ち”の屈辱。それら全てを
乗り越えて、最後に奪い返したFWとしてのプライド、大学屈指のBK陣を影で支えた充実感を短い言葉に滲ませます。

「最後BKに取ってもらうという流れをFWから作れたのは嬉しいですね。モールでもトライを取りましたし、この1年間
やってきたことは間違いじゃ無かったんだなと。」

卒業後はトップリーグ・ヤマハ発動機へ。1年生時のキャプテンで同チームで活躍するOBのLO桑野詠真選手を経由して、
自らを売り込んだと入団の経緯を話します。

「自分を見て欲しい…と話に行って、入れてもらいました。セットプレーを強みとして、そこから勢いに乗るチーム、
FWが強いチームというのは魅力的で、僕もFWがめちゃくちゃ強いチームでやりたいなと思っていたのでそれで決め
ました。詠真さんとLOコンビで出るのが理想ですね、頑張ります!」

数々の試練を乗り越えてそれでも前を向く心身の力強さ、次のステージでも地道に努力し続ける事を誓います。
【鳥越裕貴】



決勝戦後のウイニングラン、下川選手(左)と幸重選手(右)と笑顔で写真に収まる三浦駿平選手(中央)。
親友・幸重選手が三浦選手について。「一緒に飲みに行ったり…。あいつが3年生の時に出られなかった、
悔しい思いも知っているし、今年一緒に出れて良かったです。自分のやるべきことを淡々とこなす、良い
プレーヤーです。」

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