牽引

10月9日、対抗戦序盤の山場・筑波大戦。相手の前に出る防御にプレッシャーを受けて苦しんだ前半を経て、後半試合の流れを引き寄せたのはFB河瀬諒介選手のランでした。1トライ1アシストでチームの勝利に貢献、関東協会選出の「プレーヤー・オブ・ザ・マッチ」、大田尾竜彦監督が選ぶ「チームMVP」をダブル受賞します。

「苦しい時間帯に前半最後に長田がトライを取ってくれたというのもありますし、BKで流れを変えたいという思いがあったので15番として、そういうプレーが出来たのは良かったと思います。」

後半5分には自らの突破からCTB長田智希主将のトライを演出、冷静に相手ディフェンスの陣形や味方選手の位置を見渡します。

「相手のチェイスが右サイドの方が上がっていて、オープンサイドが下がっているのが見えていました。パスが綺麗に来れば、そこのギャップを走ろうと思ったのですけど、あまりいいボールが来なかったのでチームとしてのコミュニケーション通り、外に行こうと…目の前が7番だったので勝負できるなと思いました。ちらっと見た時に長田が躓いているのが見えて、どうしようかと思ったのですけど、たぶんそのまま(長田主将が)上がってくるだろうと思って左に行きました。」

後半14分には自ら仕掛けてそのまま独走トライ、数的優位の局面で「外でも取りきれたと思うのですけど、僕のところも空いていたので(SO吉村)紘がいい判断をしてくれた」と振り返り、トライ直後には雄叫びをあげて気持ちを前面に出します。

「4年生で最後ですし…。毎年毎年日本一は狙っていますし、日本一に対する思いは変わらないのですけど、4年生というのはまた違う責任やプレッシャーがあるので、違う気持ちで試合をやっています。」

年々進化を続けるエースランナー、鍛え上げたフィジカルの部分では日本体育大戦で相手PRの選手を弾き飛ばす場面も。「4年間を通して強化している部分ですし、最近はあまり当たり負けなくなってきた」と手応えを掴みます。そんな河瀬選手にとって忘れられない試合は昨年度の大学選手権決勝・天理大戦。

「完敗だったので…。二度とあんな試合をしたくないですし、あの試合を忘れる事無く、今年一年やることが日本一に繋がると思います。あの試合があったから、今年しんどいこと、痛いこと、苦しいことも乗り越えていけているのかなと思います。」

憧れの存在である日本代表・松島幸太朗選手のように強さと速さを兼ね備えて、プレーでチームを引っ張りたいと話せば、1年生時から一緒にプレーするPR小林賢太副将もその存在を既に「プレー面でのチームの精神的支柱」と話します。

「スクラムを頑張って、顔を上げたらBKが前に出てくれているというのは理想的なシーンですし、そういう時にラインブレイクしてくれているのは河瀬。信頼していますし、勇気付けられています。」(PR小林賢太副将)

それでも河瀬選手はこの日の活躍にまだまだ満足していないと振り返ります。前半、自陣ゴール前でこぼれ球を拾って右タッチライン際をビッグゲインしたシーンについて

「トライまで行きたかったです。一人目をハンドオフした時に二人目が目に入ってしまって…。そのまま、後ろを向いてハンドオフするべきか、前を向いて走るか迷って、後ろを向いてしまいました。前を向いて走って、もうちょっと引き寄せてからハンドオフしておけばトライもできたかなと、そこは修正が必要です。」

と反省。対抗戦も折り返しを迎えていよいよ終盤戦、強豪校との戦いを前に誓います。

「(相手が)強くなってくるとFWのところでプレッシャーも受けると思いますし、ディフェンスの圧力もかなり上がってくると思うのですけどそこで僕がゲインを切ったり、トライまで取り切ることでチームに勢いを与えられたらと思っています。」

ラストイヤー、一段と凄みを増した河瀬諒介選手がそのプレーでチームを牽引します。【鳥越裕貴】



突進する河瀬諒介選手。課題について「今はディフェンスのところです。新ルール(50:22)も追加されましたが、練習中でもココ危ないなというシーンがちょくちょくあったりするので、そこでのバックスリーのコミュニケーションは密に取って行かなければいけないと思います。」

inserted by FC2 system