自覚

11月3日、帝京大戦。相手の強力スクラム、接点での激しいプレッシャーに苦しめられて対抗戦初黒星…その中でも大田尾竜彦監督がチームMVPとして評価したのが1年生SH宮尾昌典選手。

「これまではあまりタックルするシーンがなかったのですけど、今回の試合は狙われるかなと自分でもわかっていたので覚悟していました。体を張れましたし、ディフェンス面で自分も通用すると今回の試合で自信がつきました。」

大学屈指のフィジカルを誇る帝京相手に通用したディフェンスに加えてアタックでも活躍。後半6分、CTB岡ア颯馬選手-PR小林賢太選手と繋がり、最後は宮尾選手へ。好サポートからチーム初トライも記録し、重苦しい雰囲気を振り払います。

「誰かがゲインした時は、ハーフにとって大チャンスだと思うので、そこに必ずつくという意識は持っています。賢太さんのサポートコースが良かったのでそれについていく感じでボールをもらえたかなと思います。」

トライ直後にはラストパスを放ったその小林賢太選手が真っ先に駆け寄り、宮尾選手を抱き上げます。「嬉しかったですね」と話し、続けます。

「(小林選手とは)仲良くさせて頂いています。優しいですし、ちゃんと指摘もして下さる。相談とかもしやすいですし、プレー面でも試合中でも思っている事が言えるのでそういうところが(最後の)パスとかにも繋がっているのではないかなと思っています。」

寮で部屋を行き来したり、練習の合間にも一緒に居たりとポジション、学年を超えた”師弟コンビ”はグラウンドでも息の合ったプレーを見せます。

京都成章高校からワセダへ。そこに背番号9と言えば、長年のワセダファンにとっては矢富勇毅選手(2006年度卒。現静岡ブルーレヴズ)の名前が思い浮かぶところ。現在も第一線でプレーを続ける大先輩とは大学入学後に話す機会も出来、アドバイスを受けることもあると言います。

「パスとか教えてもらったりしています。パスとか一つ一つのプレーに、なんで今こういうパスをしたのか、なんでこういうパスになってしまったのかとか、細かいところまで質を大切にやった方が良いと言われています。量だけではなく、質も大切にするようにしています。」

その矢富選手の存在と、自身の目標と話す斉藤直人選手(2019年度卒。現東京サントリーサンゴリアス)に影響を受けて、ワセダへの進学を決意。春先はケガで出遅れたものの「先を見すぎずに出来ることから」と一日一日を大切に積み重ねてアカクロジャージに到達、開幕戦から繋ぎ役だけではなく、ランでも見せ場を作ってここまで5戦で5トライ。順調なルーキーイヤーを過ごしながらも。帝京大戦での初黒星、試合のレビューを経て悔しさをにじませます。

「勝てた試合でもあったのかなとレビューのミーティングを通して思いました。もうちょっと自分たちのやってきたことであったり、細かい部分がもう少しできていたらもっと自分たちのいい形に持っていけたんじゃないかなと感じています。個人としてもテンポをもっと出すことが出来ていれば、もっといい攻撃に出来たんじゃないかなという反省はあります。」

残す対抗戦は早慶戦、早明戦という伝統の二試合、意気込みを話します。

「チームに流れをもっていけるような選手でありたい。トライじゃなくても一つ一つのプレーでチームを前に出したいですし、ディフェンス面では外から声を出して自分自身も体を張って。ワセダの9番というプライドをもって早慶戦、早明戦に臨んでいきたいと思っています。」

日本代表の偉大なワセダOBの背中を追いかけて始まった大学ラグビー生活。対抗戦デビューから2か月、言葉から滲み出る責任感の中に既に主力選手の自覚すら感じます。【鳥越裕貴】



トライをあげるSH宮尾昌典選手。得意なプレーについて聞くと「パス、ラン、キック、基本的に全部自信あります。どこが一番強いとか一番弱いとかはあまりないので、全部を強みに全部のレベルを高くしたいですね。」

inserted by FC2 system