副将

12月5日、早明戦。長田智希主将不在の一戦でチームを支えたのがPR小林賢太副将。大田尾竜彦監督がその活躍を称えてチームMVPに選出するも本人は全員の勝利と強調します。

「ゲームテーマがバトルと言う中で80分間試合に出ているメンバーが戦い続けて自分たちのテーマに対してやったことが成果に出た、そこは凄い良かったかなと思います。」

あまり過去に例を見ない主将不在で迎える大一番、試合前日には笑顔を見せながらも「緊張しています」と一言。その緊張から解き放たれたのはノーサイドの笛が鳴り響いた瞬間、思わず涙がこぼれます。

「結果がついてこなかった時には『やっぱり長田が居ないと…』と言われてしまうのではないかという事であったり、圧倒的なリーダーが居ない中で伝統の一戦を戦うという事で自分自身プレッシャーに感じている部分が色々ありました。それでちょっとああいう風になってしまったというか…」

と照れ笑い。ベンチで迎えた勝利の瞬間、同じくベンチに下がっていた後輩達が次々と駆け寄り歓喜の輪、その中心で「素直に嬉しかったですね」と振り返ります。早慶戦後半で長田主将が途中交替、チームがまとまりを欠いた反省から早明戦に向けては、ファイブフォースと呼ぶアタック、ディフェンス、セットプレーなどチームが強みとしている部分でどこに立ち返るかを委員会などを通して再確認します。

「圧倒的なリーダーがいない分、そこを補い合うじゃないですけど、ファイブフォースのそれぞれのリーダー達といつも以上にコミュニケーションを取り合って自分たちが巧く行かなくなった時だったり、窮地に陥った時に立ち返る場所、そういうのを試合までに明確化できました。そこが早慶戦との差だったかなと思います。」

早明戦ではスクラムでプレッシャーを受けたものの、試合の中でディフェンスに立ち返ることを意志統一、チームとして成長した姿を見せます。チームの対応力を見せた一方で、拘り抜くポイントも新たに再確認、3つの言葉にまとめて部室の壁に貼り出します。『規律』『要求』『反応』…並べられた言葉の中で小林選手が特に大切にしているのが『反応』。

「リーダーが色々発信とかはしているのですけど、それに対してのリアクションというか、例えばこれまでは試合中にこれをやろうと話してもそこに対してのリアクションがあまりなかったり…。他の場面でいうと帝京戦ではルーズボールが全部相手側に入ってしまったり、そういうこぼれ球への反応とか、コミュニケーションだけでなくて色んな部分の反応が足りていないと感じたのでそこは重要なポイントなのかなと思います。」

練習中でもチームの中心で一人一人の目を見ながらコミュニケーションを取り、2年生や1年生の言葉にもしっかりと耳を傾けます。その姿を同じ4年生の桑田陽介選手は次のように話します。

「頼りがいがあるとしか言いようがないですし、あいつを軸に動いています。チームとしては自分も含めて4年生が引っ張っていかないといけないのですけど、その中で賢太が引っ張ってくれる事でFWとしてのまとまりもあります。一人一人の選手を気にかけているところがチームからの信頼にも繋がっていると自分は感じています。注目されている中で自分だけでなくて周りの事も気を配れるすごい選手だなと思います。」

1年生時から主力として活躍してきた小林副将もラストイヤー、頭の中にあるのは大学日本一の一点のみ。Aチームだけでなく、下のチームの練習試合を見ていて感じる一体感に手応えを掴みます。

「Bチームが(11月に)帝京戦・東海戦とジュニア選手権でいい試合をしてくれて、Aチームの僕達がそこに奮い立たされたというか、自分たちはこのままじゃダメだと感じさせられました。そこから僕達の早明戦のパフォーマンスがあって、その早明戦で今度はチーム全体がここで戦わないとダメだと認識を持てたと思いますし、いい循環…いいチームになっているのかなと思います。今日の練習試合も自分たちがやりたいことを下のチームがすごく体現してくれて、すごくいい仕上がりと言うかチームとしてはいい方向にいっているなと思います。」

主将不在の大一番を制して1週間、いよいよ始まる最後の大学選手権を前に言葉に力を込めます。

「自分たちの強みが明確になって、課題も明確になって…あと一ヶ月しかなくて次負けたら終わり、危機感もありますが自分たちの強みをのばしていきたい。長田が居ない状況の試合というのはあまりなくて、。自分自身にとってもあのビッグマッチでそういう経験ができたのはこれからの残り一ヶ月を過ごしていく中でも貴重な時間だったと思います。」

上井草グラウンドに差し込む西日を受けた小林賢太副将の横顔が以前より大人びて見えました。【鳥越裕貴】



突進する小林賢太副将。早明戦での自身のプレーに「フィールドは自信を持てましたが、やっぱりフロントロー、PRとしてスクラムの部分に責任があります。セットプレーのところで巧く組めている時もあったので、自分たちの組みたい姿勢を80分間一貫してできるかが課題です。」

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